「疲れた。山下公園でも行こうか?」
同級生だったSと6畳一間の坂の上のアパートを今風に言うと「シェア」しながら
大学受験のため浪人生活をしていた。
そんなある初夏の早朝、Sが言ってきた。
原チャリ2台で坂をくだり駅前から
R1、紅葉坂を下り、線路沿いを走り
なんとなく明るくなったその公園に。
戦時中からの氷川丸が右手と大桟橋が左手そんなど真ん中のベンチで慣れないタバコをぷかぁぁっとしながら時間は経っていく。
高校の時からいい意味でも悪い意味でも「変な奴」だった、でも凡人な私には「不思議な素敵な気になる」Sはやはり「ワレ関せず」で隣のベンチで横になっている。。。
何を話すわけでもなく。っというか、Sの「取り扱い書を」高校3年間で習得した自分は、何も話さないほうがOK!だと「お互い」のためGOOだと判っていたし・・・あ、こういう状況の時は。。。
海の先の垂れ込めている靄をみながらなんとなく時間が過ぎていく・・・
「でも今日、模擬試験なんだよなぁ」なんて思ったりも・・・
Sに言ったほうがいいのか言わないほうがいいのかなんて思いながら。
でも世の中は動いている感じで
横目にちゃりんこが少しよれよれしながゆっくりとやってくる、、、
何とはなしに目で追っていると
見事に赤茶に錆び錆びのちゃりが目の前で止まった。
レインコートはボロボロ、履いているのは安全靴だろうか指先の鉄の部分がむき出しだが汚れてよくわからない。白髪交じりの髪はボサボサ寝癖チックだが、さまにはなっている。そんな初老のホームレス風な男がこちらに背をむけ仁王立ちで海のほうを見出した。まっすぐに。
姿勢はいいな、と思った。
ん?でも広い公園で人もうちらと遠くのベンチに散歩中の人しかいないのに・・・
なんてまたつまらないことを思ったが、、、
後姿から左腕がないのが判り、何となく「うっ」と緊張してしまった。
何秒か何分か経ったんだろうけど、その「うっ」な感じで固まったままだった。
Sは気にしてるのかしていないのか横になったまま。
なんとなく「帰ろ?」と言おうと思ったら
そのおっさんが右手でズボンのポケットから何かを取り出し口元へ・・・
ハープだった。。。
流れてくるメロディーはなんだか判らない。でも、
軍歌?いや昭和の昔の歌謡曲?民謡?童謡?
判らないが、ただなつかしぃ日本のものであるのは判る。
「うっ」という感じのままベンチで聴くしかなかった・・・
1曲?1フレーズ?終わると名前らしき言葉をぼそぼそといっているらしい
数分後おっさんがこちらを向きちゃりに乗ろうとした時
ちらっと目が合い、口元が「にやっ」という感じで動いた・・・
「うっ・・・」
半分びびりながらSを見ると、起き上がり両手をぽっけにいれ足を組んで少し前かがみで座っていた。
おっさんがよろよろしながら来た方向へ帰っていくと
今度は逆から
犬が・・・
いい距離をたもってぴょこんと座り
自分に向かって「わん」と2回ほえた
飼い主らしきおっさんが遠くで名前を呼んでいる。
Sが苦笑しながら
やっと「帰ろ」って・・・言ってくれた・・・
Sも口元が「にやっ」だった。。。
帰り道の記憶はない。紅葉坂は遠回りなはず・・・それだけは確かだ。
部屋でSがTENSAWのレコードをプレーヤーにのせてコーヒーを淹れてくれた。
1曲目、DUCK JOEのギターのリフが突き刺さった。
模擬試験には行かなかった。。。
TENSAW | TENSAW
DUCK JOE / SMILING SMILIN' / YOKOHAMA FRIDAY NIGHT / ROCK'N ROLL SYMPHONY / DOBUITA ST(MR.BLUES GUY) / TAXI DRIVER / NAYAMUKOTOWA / YONONAKA KAWARUSA
DELICATE MOTION / TENSAW
DELICATE MOTION / RESISTANCE / SHOGYO MUSIC / TALKING WORDS / SHINING STAR / CHINA TOWN WOMAN / WINDOW / SENSATION
最近のコメント